伊藤研究室

東京大学大学院医学系研究科
疾患生命工学センター 再生医療工学部門

 


Research
研究方針 | 研究内容
伊藤研究室で行っている研究を紹介します。

研究分野1:医用ハイドロゲルの開発
研究分野2:再生医療
研究分野3:ドラッグデリバリーと癒着防止材料

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研究分野1:医用ハイドロゲルの開発

○多糖類をベースにしたハイドロゲル

 生体由来の様々な多糖類をベースに、化学的な修飾を施すことによって新しいバイオマテリアルを創製します。特にヒアルロン酸は人体内での生体適合性に非常に優れ、整形外科領域で膝関節痛を緩和するためにヒアルロン酸注射を行う治療法も確立しています。近年、化粧品やコンタクトレンズケアー用品など非医用材料としても重要になっています。最近進歩しているクリックケミストリーなども取り入れて、新しいバイオマテリアルの開発を行っています。

     

○デンドリティックポリマーを用いたバイオマテリアル

 高分子合成法の進歩によってデンドリティックポリマーが産業応用に至っています。低粘度化、表面官能基の修飾が容易であるなど、様々な特性があり、発泡材料や紙塗工材料などに用いられるようになってきています。当研究室では、これらのポリマーを化学修飾してビルディングユニットとした新たな医用ハイドロゲルやコロイド分散系の研究を行っています。

研究分野2:再生医療

 臓器不全に陥った患者を救う方法は、人工透析(血液透析膜)、人工心臓(ポンプ)などの機械的な人工臓器がありますが、性能にも限界もあります。近年注目されているのが再生医療です。体外で人工的に組織を再生し、移植組織を人工的に作ろうという試みです。特に1990年代より、MIT/MGHのグループによって、組織工学(Tissue Engineering)が提案されました。細胞・細胞増殖足場材料(スキャフォールド)・シグナル因子の3種類を合わせて、プロセス制御をおこなえば、人工的に組織が作れるのではないかという発想です。

当研究室では化学工学的観点から下記の研究を行っています。


3次元培養のための細胞封入マイクロカプセル【生産技術研究所・酒井研究室との共同研究】

 再生膵島のスキャフォールドを目指し、クリック反応をする多糖類を細胞封入担体としたマイクロカプセル作製技術の研究を行っています。








                                                 
○膜乳化法による人工酸素運搬体【酒井研究室・工学院大学中尾・赤松研究室との共同研究】

テキスト ボックス:  3次元組織を構築する上で、酸素供給は大きな課題です。当研究室では、ウシヘモグロビンを封入した人工酸素運搬体の作製を、SPG膜乳化法+重合法で実現することを目指しています。膜乳化法とは数100nm〜数10μmの均一な細孔を有するガラス多孔膜を通して、連続相中に分散相を押し出すことによって、非常に均一なエマルションを作る技術です。



研究分野3:ドラッグデリバリーと癒着防止材料

ドラッグデリバリーシステム(DDS

 DDSとは“必要最小限の薬物を、必要な場所に、必要なときに供給する”技術です。DDSでもクラシカルな技術は血中での薬物徐放です。下図のように薬理効果を示す濃度以上になると副作用が大きくなり、それよりも低くなると薬剤は効果を示しません。なるべく薬理効果領域で長い時間薬剤濃度が維持されると、薬理効果の向上、副作用の低減、投与回数の低減、QOLの向上が期待されます。

 当研究室では生体内でゲル化するinjectableなハイドロゲルを用いたDDSを研究しています。

○腹膜播種 【東京大学医学部・腫瘍外科との共同研究】

 腹膜播腫は、原発胃がんや卵巣がんから腹腔内の他の様々な腹膜や臓器漿膜へとがん細胞が転移するがんです。転移巣は大きさが数ミリ〜数センチ(さらに目視より小さいものが多数)と小さく広範囲に点在するため、化学療法が期待されています。

 

 

 

                     Linkhttp://pacivip.umin.jp/

腫瘍外科の北山准教授らが実施した臨床試験により、疎水性抗がん剤のタキソールを腹腔投与することによって、播種巣に直接高濃度の薬剤を局所投与し、静脈投与よりも効果が上がることがわかってきました。他の抗がん剤のセカンドライン、サードラインとして用いることができれば、より治療の選択肢が広がります。シスプラチン(CDDP)などの水溶性抗がん剤においては腹腔からのクリアランスが早く十分な効果が得られません。CDDPの腹腔投与を可能にする新しいDDSの開発を目指しています。

○放射線療法と免疫療法の併用【東京大学医学部・腫瘍外科との共同研究】

 古くからがんの治療法として、患者の免疫系を制御することによって、患者の免疫系によりがんを治療する免疫療法が検討されてきました。インターロイキン製剤の投与と放射線療法の併用が、放射線療法単独よりも効果が上がるのではと期待されています。IL-2の局所徐放を検討しています。

ヒアルロン酸/フィブリン コンポジットゲル

○腹膜癒着防止材料 【東京大学医学部・肝胆膵外科との共同研究】

 胃・腸・肝臓・膵臓など多くの臓器を含む腹腔内臓器の開腹手術や腹腔鏡手術後に、臓器同士、あるいは腹腔を包む腹膜と臓器がしばしば癒着し剥れなくなります。これを腹膜癒着といいます。肝臓外科領域でも、繰り返し肝切除により、高頻度で癒着が起こり、手術の安全性低下や手術の長時間化などの原因になっています。腹腔鏡下で使用できるinjectableなハイドロゲルのメリットを生かし、新たな癒着防止材料の開発を行っています。