構造生理学
構造生理学
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講師
柳下 祥
1. 研究概要
統合失調症やうつ病といった精神疾患の発症や症状の基盤に興味をもって研究をしている。この主要な手がかりは精神疾患治療薬の標的であるモノアミンの作用機序の実態解明、特に可塑性修飾を介した学習制御機序を正確に理解していく生理学が基盤となると考えている。このため2022年に退官された河西春郎教授が築き上げた2光子励起法を用いたシナプス研究を応用し、分子生物学・電気生理学・動物行動実験・MRIなど多様な手法をを組み合わせて研究を進めている。さらに附属病院・精神科との連携によりヒト研究の知見を動物研究に活かすトランスレーションの土壌を開拓してきた。特にこれまでドーパミンの一過性濃度変化による可塑性修飾機序を明らかにしてきたが、これを手掛かりとした統合失調症関連モデルの研究や、前頭葉の可塑性機序などへ展開している。前頭葉可塑性機序を調査する過程で思いがけずミクログリアの重要や関与を最近見出している。
2.研究開発の目標
- ドーパミンによる可塑性修飾の知見に立脚した、新たな統合失調症の発症モデルの開拓
- 前頭葉スパインの可塑性制御機序の調査
- セロトニンなどの他のモノアミンによる神経修飾因子の役割の調査
3.業績
- Iino, Y., Sawada, T., Yamaguchi, Tajiri, M., K., Ishii, S., Kasai, H.* & Yagishita, S.* (2020) Dopamine D2 receptors in discrimination learning and spine enlargement. Nature 579: 555-560.
- Yagishita, S., Hayashi-Takagi, A., Ellis-Davies, G.C.R., Urakubo, H., Ishii, S. & Kasai, H. (2014). A critical time window for dopamine action on the structural plasticity of dendritic spines. Science, 345:1616-1620.